■大学生の学力低下
 「最近の大学生は・・・」というと、「学力低下」が続けて叫ばれることが多い。大手企業や会社関係者が新卒者を評価して言うセリフである。そしてその学力は年々低下していっているらしい。この話を聞くたび、英才教育と言って小さいころから多くの知識を身に付け、厳しい受験戦争を生き抜いて来たはずの学生は何故それほどまでに学力低下が言われるようになってしまったのか疑問であった。『学生の学力低下に関する調査結果』*による教員の反応では、学習意欲に欠ける学生の入学、自主的に考え表現する能力の無さ、受験学習への偏りが多く寄せられている。これを改善する策として、日本の受験教育システムを考え直すことが必要だ。先日NHKを見ていたら、(残念ながら日付と番組名は忘れてしまったのだが)「スウェーデンは親の資産状況に応じて罰金の額が決められる」という話を聞き、目からウロコが落ちた。この方式を日本の大学システムに取り入れることはできないのだろうか。つまり上流階級の子女は多くの授業料を支払うことにし、貧乏な家庭はタダにする。現在高い入学金と授業料を支払う日本、授業料のみのアメリカ、そして一切無料が多いほとんどのヨーロッパ諸国、どのシステムよりも合理的で、最も学生の意欲を反映できる教育システムだと思う。この方式は医学部で最も効果を発揮する。高い学費ゆえに、裕福な開業医の子供しか医学部に入れない現状は、歪んだエリート意識ばかりを高め、倫理観の喪失や医療ミスの隠蔽などにもつながっている。親の資産に応じた学費制度を導入すれば、能力とやる気のある者が医者になれるチャンスが広がるのではないだろうか。
■フリーターの存在意義
厚生労働省の定義によれば、低賃金、低技能のパート労働者の200万人。総務省の定義では、派遣社員や契約社員を含めるために417万人、フリーターという言葉が流行、定着したのは、1987年ごろのことだった。それまではアルバイターなどと呼ばれていたようである。フリーターは無責任・税金を払っていないなどとマスコミから激しく槍玉にあげられる。作家・村上龍は、「フロム・エー」(2001年3月6日号)巻頭のインタビューで「フリーターに未来は無い」という発言し、この発言を幾度と無く繰り返してきた。「アンチ競争社会の世界で生きる」ことは逃げているだけで、「技術やスキルがない」から、結局は企業などに安く「コキ使われてしまう」だけでいいことは何もない、ということのようだ。フリーターでもビジョンを持っている人は未来が無いといわれても気にしないだろうが、問題なのは不安なのに何とかなると思考を停止させている人たちであろう。この発言を聞いたフリーターたちは危機感を抱いただろうか。私はフリーターが増えたのは働くことの意味が「国のため」「社会のため」から「自分のため」と考える人が増えたことが原因ではないかと思う。結婚相手として考えるならば私はフリーターは考えられない。やはり定職に就いた人でないと将来が不安だ。しかし、正社員より低賃金で学生より沢山働くことのできるフリーターは現代社会にとって必要な労働力であることも確かだ。村上龍はそんなフリーターを「未来は無い」と切り捨てているのではなく、「フリーターはもっと努力してスキルを磨いて競争社会に生きろ」という応援のメッセージを送っているのだと思う。
■親になれない大人たち
昔から子供の虐待は存在し、若い親だけが虐待行為をするわけではないが、若い親が若い父母が加減がわからずに我が子を死に至らしめるニュースを非常に多く耳にする。成人式に出席した時、小学校時代の友人の何人かはすでに結婚し、子供がいる人がいた。彼女は子育てに相当苦戦していて、「夜鳴きするから眠れない」、「泣き止んでくれないとぶってしまう」などと話していた。性の自由化の風潮の中で若者の性行動により、望まない妊娠をするケースは増えている。一部の若い親には、子育ての環境も知識も十分整わないまま親になってしまった人もいるだろう。昔はこのような若い親を家族だけでなく、近所の人たちなど地域ぐるみで支えていたという。近年、核家族化が進むにつれ、若い母親は地域に気軽に相談できる人がいず、孤立し、迷いながら子育てをしている人も少なくないのが現状だ。それが子供を虐待することにつながり、悲しい結果を生みだしている一つの要因である。私の母親は、「子供が生まれた時、まだ母親は半人前だ」と言う。親も子供と成長していく、それには地域の先輩たちの力も必要なのだそうだ。近い将来、自分自身にも大きな課題となってくる子育てをしっかり行うために必要なことは、自分の自信と地域に守られているという安心感、そして知識だと思う。社会がもっと若い親や子供に関心を向けなければなるまい。

最も身近な問題として、同じ世代の若者として、一般的に言われる若者の問題について取り上げたが、社会にはまだまだ考えるべきこと、問題もまだまだある。今、前回の課題図書でテーマであった「自信力」はその解決につながる重要なキーワードであったような気がする。1月11日に始まったNHK大河ドラマ「新撰組!」で佐久間象山が「20代は家族、30代は故郷、40代で国、50代で世界を考えればよい」と言っていた。現代はこれでは目を見開くのは遅すぎると思うが、とにかく自分の目前にあるものを自信を持って精一杯こなしていけば良いという応援メッセージとして受け取った。社会の一員になったばかりの新成人も、やれることを一生懸命やって行こう。まずは自分に自信を持つことでまずは自己を確立せねばなるまい。少しずつ、自分のことだけでなく社会にも目を向け、ものを考えていくことが我々の課題だと思っている。

■参考サイト
『大学の学生納付金』

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